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August 02, 2012

高脂肪食は視床下部の神経細胞の入れ替わりを阻害

Remodeling of the arcuate nucleus energy-balance circuit is inhibited in obese mice.

弓状核(ARN)のエネルギー・バランス回路の再構築は肥満マウスで阻害される。

PUBMEDより

J Clin Invest. 2012 Jan 3;122(1)

McNay DE, Briançon N, Kokoeva MV, Maratos-Flier E, Flier JS.

Source

Beth Israel Deaconess Medical Center, Division of Endocrinology, Diabetes, and Metabolism, Center for Life Sciences, Boston, Massachusetts, USA.

Abstract

要旨

In the CNS, the hypothalamic arcuate nucleus (ARN) energy-balance circuit plays a key role in regulating body weight. Recent studies have shown that neurogenesis occurs in the adult hypothalamus, revealing that the ARN energy-balance circuit is more plastic than originally believed.

中枢神経では、視床下部の弓状核(ARN)のエネルギー・バランス回路は体重を制御することにおいて重要な役割を果たします。最近の研究は神経発生が成人の視床下部で生じて、弓状核(ARN)エネルギー・バランス回路が元来信じられていたより可塑性であることが明らかにした。

arcuate nucleus (ARN) 弓状核
neurogenesis 神経発生

Changes in diet result in altered gene expression and neuronal activity in the ARN, some of which may reflect hypothalamic plasticity. To explore this possibility, we examined the turnover of hypothalamic neurons in mice with obesity secondary to either high-fat diet (HFD) consumption or leptin deficiency.

食事の変更は結果的に弓状核(ARN)で遺伝子発現および神経細胞活性を変更して、それらの幾つかは視床下部の可塑性を反映するかもしれない。この可能性を探るために、私たちは、高脂肪食(HFD)摂食あるいはレプチン欠乏のいずれかに次いで肥満マウスで視床下部神経細胞の入れ替わりを調査した。

hypothalamic plasticity 視床下部の可塑性

leptin:レプチン は脂肪組織によって作り出され、エネルギーの取り込みと消費の制御に重要な役割を果たす16kDaのペプチドホルモンで、食欲と代謝の調節を行う。

We found substantial turnover of neurons in the ARN that resulted in ongoing cellular remodeling. Feeding mice HFD suppressed neurogenesis, as demonstrated by the observation that these mice both generated fewer new neurons and retained more old neurons.

私たちは進行中の細胞再構築で起こった弓状核(ARN)の本質的な神経細胞の入れ替わりを見つけた。これらの両方のマウスは少ない新生細胞の産生およびより多くの古い神経細胞を保持したという観察によって実証されるように、高脂肪食(HFD)飼育のマウスは神経発生を抑制した。

cellular remodeling 細胞再構築

This suppression of neuronal turnover was associated with increased apoptosis of newborn neurons. Leptin-deficient mice also generated fewer new neurons, an observation that was explained in part by a loss of hypothalamic neural stem cells.

神経細胞の入れ替わりのこの抑制は神経細胞新生のアポトーシス増加と関係している。レプチン欠乏マウスも新生神経細胞の産生が少なくて、視床下部の神経幹細胞の欠如によって部分的に説明された観察であった。

newborn neurons 神経細胞新生
neural stem cells. 神経幹細胞

These data demonstrate that there is substantial postnatal turnover of the arcuate neuronal circuitry in the mouse and reveal the unexpected capacity of diet and leptin deficiency to inhibit this neuronal remodeling. This insight has important implications for our understanding of nutritional regulation of energy balance and brain function.

これらのデータは、マウスおける弓状核の神経回路網の本質的な出生後の入れ替わりがあって、この神経再構築を阻害する食事の予期しない力およびレプチン欠乏を明らかにしたことを示している。この洞察はエネルギー・バランスおよび脳機能の栄養調節の理解にとって重要な意味合いを持ちます。

Postnatal:出生後の

レプチン関連の視床下部炎症についての関連記事

第11回 肥満ホルモン「レプチン」と睡眠ホルモン「オレキシン」より

レプチンと脂肪細胞 〜脂肪細胞から視床下部へメッセージ〜

http://www.nips.ac.jp/nipsquare/sknews/series/entry/2010/05/post-4.html

脂っこい高脂肪食を食べ続けるとこのメカニズムに「ゆがみ」が生じてきます。高脂肪食を食べ続けると、やがてレプチンが視床下部で効かなくなり逆に食欲が促進される上に筋肉などでのエネルギー消費が低下し、糖尿病などの病気を引き起こす事態になってしまいます。

考えたこと

上記文献で成人の視床下部で新しい神経が産生することを知り、神経新生のことを調べてみました。成人の脳に神経幹細胞が存在していて、継続的に新しい細胞を脳に供給していることを知りました。ところが神経新生がおこる場所、この場合は視床下部の状態が高脂肪食だと視床下部に炎症をおこして細胞の入れ替わりがうまくいかないことが解りました。

食事を変えると元に戻り神経新生がおこるとありました。体は体内の環境(食事の変更)するとことで損傷をうけた視床下部の機能がもとに戻り神経新生ができるのかと思いました。

神経新生のことを調べていたら下記の記念誌があることを知り入手しました。

幹細胞のことについてご紹介します。

この幹細胞とは何かについては、10周年記念誌・これは何?から始まる発生学、理化学研究所・発生・再生科学総合研究センターより引用します。

http://www.cdb.riken.jp/jp/

幹細胞は分裂して自らのコピーをつくる「自己複製脳」と多様な種類の細胞をつくり出す「多分化能」を兼ね備えた細胞。幹細胞は発生の不思議を解く鍵であるとともに、再生医療への応用が期待されます。

ES細胞(杯性幹細胞・Embryonic Stem Cell)

発生初期の杯(杯盤胞)から得られる幹細胞です。これらの細胞は将来一つの体をつくるため、自己複製脳と多分化能を備えています。

受精卵→杯盤胞→内部の細胞塊を取り出す→人工的に培養して細胞を増やす

iPS細胞(人工多能性幹細胞・Induced Pluripotent Stem Cell)

皮膚などの体の細胞を取り出し、遺伝子導入によってつくられた幹細胞です。ES細胞と同様の自己複製脳と多分化能を備えています。

皮膚細胞など→ES細胞では働いている4つの遺伝子を導入→人工的に培養して細胞を増やす

組織幹細胞(体生幹細胞・成体幹細胞)

体の中でそれぞれの組織・器官に細胞を供給し、新陳代謝などに働いている幹細胞です。

神経幹細胞:色々な神経細胞を作れる.

上皮幹細胞:上皮の細胞をつくれる。

間葉系幹細胞:心筋や血管、骨など間葉系の細胞をつくれる。

血液館幹細胞:血液の細胞をつくれる・赤血球

体の新陳代謝が遅くなると老化に結びつきます。どのような生活がこの組織幹細胞を生み出して新陳代謝を良くしてくれるのだろうか?ここで一つ分かったことは高脂肪食が新陳代謝からみても良くないとのことです。

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