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November 07, 2013

抗嘔吐薬によって殺傷される脳腫瘍細胞

Brain Tumor Cells Killed by Anti-Nausea Drug Science dailyより

抗嘔吐薬によって殺傷される脳腫瘍細胞

Anti-Nausea Drug 抗嘔吐薬

New research from the University of Adelaide has shown for the first time that the growth of brain tumors can be halted by a drug currently being used to help patients recover from the side effects of chemotherapy

アデレード大学の新研究は脳腫瘍の増殖は化学療法の副作用から患者を回復させるのに現在しようされている薬剤によって止めることが出来ることを初めて示した。
1.
The discovery has been made during a study looking at the relationship between brain tumors and a peptide associated with inflammation in the brain, called "substance P."

この発見は脳腫瘍と“サブスタンスP”と呼ばれる脳の炎症に関係するペプチドとの関係を考察する研究中に行われた。

Substance P is commonly released throughout the body by the nervous system, and contributes to tissue swelling following injury. In the brain, levels of substance P greatly increase after traumatic brain injury and stroke.

サブスタンスPは一般的に神経系によって身体全体に放出されて、損傷後の組織膨張に寄与する。脳では、サブスタンスPのレベルは外傷性脳損傷および脳卒中後に大幅に増加する。

tissue swelling 組織腫脹
Traumatic brain injury外傷性脳損傷

"Researchers have known for some time that levels of substance P are also greatly increased in different tumor types around the body," says Dr Elizabeth Harford-Wright, a postdoctoral fellow in the University's Adelaide Centre for Neuroscience Research.

"研究者はサブスタンスPのレベルも大幅に体の周囲の様々な腫瘍タイプで増加していることをしばらく前から知っていた。“とアドレード大学神経科学研究の博士研究員、Dr Elizabeth Harford-Wrightは述べている。

"We wanted to know if these elevated levels of the peptide were also present in brain tumor cells, and if so, whether or not they were affecting tumor growth. Importantly, we wanted to see if we could stop tumor growth by blocking substance P."

“ペプチドのこれらの上昇レベルも脳腫瘍細胞で存在していて、もしそうであるならば、それらが腫瘍増殖に与えるかいなかを私たちは知りたかった。重要なのは、私たちがサブスタンスPをブロックすることによって腫瘍増殖を止めることができるかどうかを確認したかった"

In laboratory studies for her PhD, Dr Harford-Wright found that levels of substance P were greatly increased in brain tumor tissue.

彼女の博士号基礎研究で、Dr Harford-WrighはサブスタンスPのレベルが脳腫瘍細胞で大幅に上昇していたことを解明した。

laboratory study基礎研究

Knowing that substance P binds to a receptor called NK1, Dr Harford-Wright used an antagonist drug called Emend® to stop substance P binding to the receptor. Emend® is already used in cancer clinics to help patients with chemotherapy-induced nausea.

サブスタンスPがニューロキニン1(NK1)と呼ばれる受容体に結合することを知って、Dr Harford-Wrightはイメンド呼ばれる拮抗薬を用いて、サブスタンスPの受容体結合を阻止した。イメンドはすでに化学療法誘発吐き気患者に役立てるためにがんクリニックで使用されている。

NK1:ニューロキニン1(NK1)
antagonist drug 拮抗薬
Emend イメンド(選択的NK1受容体拮抗型制吐剤でがん治療による悪心、吐き気の防止に効果のある薬)

The results were startling.

結果は驚くべきものであった。

"We were successful in blocking substance P from binding to the NK1 receptor, which resulted in a reduction in brain tumor growth -- and it also caused cell death in the tumor cells," Dr Harford-Wright says.

“私たちはNK1受容体に結合することによってサブスタンスPをブロックすることに成功して、そのことは結果的に脳腫瘍増殖を減少させて、また、それは腫瘍細胞の細胞死を引き起こした。とDr Harford-Wrightは述べている。

"So preventing the actions of substance P from carrying out its role in brain tumors actually halted the growth of brain cancer.

“それで、脳腫瘍におけるその役割を遂行することからサブスタンスPの作用を阻止することは脳腫瘍の増殖を止めた。

"This is a very exciting result, and it offers further opportunities to study possible brain tumor treatments over the coming years."

“これは極めてエキサイティングな結果であって、そのことは今後数年間脳腫瘍治療の可能性を研究するために更なる機会を提供する。

用語
キニン
http://www.weblio.jp/content/%E3%82%AD%E3%83%8B%E3%83%B3
(1)炎症時に血液中に生成されて、疼痛(とうつう)の原因となる三種のペプチドの総称。血圧降下・血管拡張・平滑筋収縮・血管の透過性亢進による白血球の遊出などの変化を起こす。

関連サイト

吐き気・嘔吐でがん治療を中断させない!
がんナビより
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/201008/100504.html

わが国で現在、がん治療に使用できる制吐薬は、その作用機序により3種類に分類することができる。副腎皮質ステロイド(デキサメタゾン)、5-HT3受容体拮抗薬、ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬だ。

急性および遅発性の吐き気・嘔吐は、抗がん剤による消化管の刺激が、サブスタンスPとセロトニンという2種類の物質に仲介され、脳内にある吐き気・嘔吐の中枢を刺激することにより生じていることが分かってきた。そこでセロトニンの作用を阻害する5HT3受容体拮抗薬、サブスタンスPの作用を阻害するNK1受容体拮抗薬が制吐薬として開発された。

思いつたこと

この記事はアロマスティックによる吐き気予防のことを調べていた時に見つけた記事です。ここに脳腫瘍とサブスタンスPの関係について書いています。昨年のリアノン先生の講座“がんケアにおける炎症治療と疼痛管理”のPDF翻訳冊子に”神経ペプチドと痛み”の項目があることを思い出しました。疼痛伝達において、サブスタンスPは重要な神経伝達/神経調節物質である。脊髄の神経細胞から放出され、神経系全体に広がる。サブスタンスPがなければ、疼痛伝達は大幅に低減する。サブスタンスPがあると、疼痛伝達は増幅される。

疼痛ばかりでなくて、サブスタンスPの増加は脳腫瘍の増殖、吐き気、調べてみるとかゆみの伝達にも関係しているのでアトピー性皮膚炎と関係があります。

吐き気予防にはNK1と呼ばれる受容体にサブスタンPが結合しなければ良いことになります。
吐き気にはジンジャー精油の香りを嗅ぐと治まるとの記事を紹介したことがあります。
それで、ジンヤーとサブスタンスPを検索したとこと, PUBMEDで下記の記事が出ていました。

Effect of gingerol on substance P and NK1 receptor expression in a vomiting model of mink.

ミンクの嘔吐モデルにおけるサブスタンスPおよびNK1受容体発現へのジンゲロールの作用。

尚、ジンジャー精油にはジンゲロール(12%)含まれています。
ジンジャー精油は関節炎、リウマチ、アレルギー予防効果があります。
エッセンシャルオイル総覧・改定版より

このことはジンゲロールのサブスタンスPへの作用と関係しているのかもしれない。

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