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December 13, 2017

ヒト骨髄性白血病における異所性に発現した嗅覚受容体2AT4の機能的特性解析

海外の記事を読んでいると嗅覚受容体が鼻だけではなくて、血液、心臓および肺の細胞、大腸がん細胞および表皮ケラチノサイトにも嗅覚受容体があることを知りました。香りの化学成分がこの嗅覚受容体に作用して薬理効果を発現することの文献が増えています。

Functional characterization of the ectopically expressed olfactory receptor 2AT4 in human myelogenous leukemia.

ヒト骨髄性白血病における異所性に発現した嗅覚受容体2AT4の機能的特性解析

Functional characterization 機能的特性解析
myelogenous leukemia 骨髄性白血病

PUBMEDより

Cell Death Discov. 2016 Jan 25;2:15070. doi: 10.1038/cddiscovery.2015.70. eCollection 2016.

Manteniotis S1, Wojcik S1, Brauhoff P1, Möllmann M2, Petersen L3, Göthert JR2, Schmiegel W3, Dührsen U2, Gisselmann G1, Hatt H1.

Author information
1
Department of Cell Physiology, Ruhr-University Bochum , Bochum, Germany.

ドイツ、ルール大学ボーフム、細胞生理学部
2
Department of Hematology, University Hospital Essen , Essen, Germany.

ドイツ・エッセン大学病院、血液科
3
Department of Hematology, University Hospital Knappschaftskrankenhaus Bochum , Bochum, Germany.

ドイツ、ボーフム大学病院、血液科

Abstract

要旨

The olfactory receptor (OR) family was found to be expressed mainly in the nasal epithelium. In the last two decades members of the OR family were detected to be functional expressed in different parts of the human body such as in liver, prostate or intestine cancer cells.

嗅覚受容体(OR)ファミリーは、主として鼻粘膜上皮において発現されることが判明された。過去20年間に、ORファミリーのメンバーは、肝臓、前立腺または腸の癌細胞のような人体の異なる部位で機能的に発現することが検出された。

nasal epithelium 鼻粘膜上皮
Here, we detected the expression of several ORs in the human chronic myelogenous leukemia (CML) cell line K562 and in white blood cells of clinically diagnosed acute myeloid leukemia (AML) patients by RT-PCR and next-generation sequencing. With calcium-imaging, we characterized in greater detail the cell biological role of one OR (OR2AT4) in leukemia.

ここで、私たちは、ヒト慢性骨髄性白血病(CML)細胞株K562および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)および次世代シーケンス(NGS)によって急性骨髄性白血病(AML)であると臨床的に診断された患者の白血球に幾つかの嗅覚受容体(OR)の発現を検出した。カルシウムイメージングでは、私たちは、白血病における1つの嗅覚受容体(OR2AT4)の細胞生物学的役割をより詳細に特徴付けた。

RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction, RT-PCR)
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
next-generation sequencing  次世代シーケンス技術(NGS)
calcium-imaging カルシウムイメージング(蛍光色素を用いて細胞質カルシウム濃度を定量化する技術)

In both cell systems, the OR2AT4 agonist Sandalore-evoked strong Ca(2+) influx via the adenylate cyclase-cAMP-mediated pathway. The OR2AT4 antagonist Phenirat prevented the Sandalore-induced intracellular Ca(2+) increase. Western blot and flow cytometric experiments revealed that stimulation of OR2AT4 reduced the proliferation by decreasing p38-MAPK phosphorylation and induced apoptosis via phosphorylation of p44/42-MAPK.

両方の細胞系において、OR2AT4アゴニスト(作動薬)サンダロールは、アデニル酸シクラーゼ・サイクリックAMP介在経路を介して強いカルシウムCa(2+)流入を誘発した。OR2AT4アンタゴニスト(拮抗薬)Phenirat芳香剤はサンダロール誘発の細胞内カルシウムCa(2+)流入増加を防いだ。ウエスタンブロット法および流量血球計算実験は、嗅覚受容体(OR2AT4)の刺激がp38分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼリン酸化を減少させることによって増殖を減少させ、p44/42-分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼリン酸化を介してアポトーシス(細胞死)を誘発することを明らかにした。

Western blot:ウエスタンブロット法
flow cytometric 流量血球計算
p38-MAPK p38分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ

Furthermore, Sandalore increased the number of hemoglobin-containing cells in culture.We described for the first time an OR-mediated pathway in CML and AML that can regulate proliferation, apoptosis and differentiation after activation. This mechanism offers novel therapeutic options for the treatment of AML.

さらに、サンダロールは培養物中のヘモグロビン含有細胞の数を増加させた。私たちは、活性化後に増殖、アポトーシスおよび分化を調節することができる慢性骨髄性白血病(CML)および急性骨髄性白血病(AML)における嗅覚受容体(OR)媒介経路を初めて説明した。このメカニズムは、急性骨髄性白血病(AML)の治療のための新規治療選択肢を提供する。

hemoglobin-containing cells ヘモクロビン含有細胞

用語
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%86%E8%BB%A2%E5%86%99%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%BC%E9%80%A3%E9%8E%96%E5%8F%8D%E5%BF%9C

逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(ぎゃくてんしゃポリメラーゼれんさはんのう、Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction, RT-PCR)とは、RNA を鋳型に逆転写を行い、生成された cDNA に対して PCR を行う方法である。
PCR法では鋳型となる DNA にプライマーを付着させ、DNAポリメラーゼによって目的のプライマー配列にはさまれる DNA を特異的に検出する。PCR法は DNA の検出に用いることは可能であるが、RNA の検出をすることができない。そこで、RNA を逆転写によって cDNA に変換し、その cDNA に対して PCR法を行う。

次世代シーケンサーとは

http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/word/15/327920/040400013/?ST=health

2000年半ばに米国で登場した、遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる装置を「次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer:NGS)」と呼ぶ。塩基配列を並列に読み出せるDNA断片数が、従来のDNAシーケンサーに比べて桁違いに多い。このため、ゲノム(遺伝情報)を圧倒的に低いコストと短い時間で解析することを可能にする。DNAシーケンサー最大手の米Illumina社が開発を牽引してきた。

サイクリックAMP
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AFAMP

サイクリックAMPは環状ヌクレオチドの一種で、細胞外リガンドに応じた細胞の多種多様な生理的応答を媒介する代表的な細胞内情報伝達物質(セカンドメッセンジャー)の一つである(図1)。細胞質においてアデニル酸シクラーゼ(adenylyl cyclase; AC)の働きによりアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate; ATP)から合成され、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(cyclic nucleotide phosphodiesterase; PDE)の働きにより速やかに分解されてアデノシン5'-リン酸(5'-AMP)となる。サイクリックAMPは、分化、生存、極性形成、突起伸長、軸索ガイダンス、軸索再生、シナプス伝達、シナプス可塑性、ホルモン分泌など多種多彩な過程に関与する。

Pheniratを調べていたら下記の文献に出会いました。
2017-518324号 創傷治癒を促進するための薬剤 - astamuse
https://www.google.co.jp/search?hl=ja&rlz=1T4TSJH_jaJP685JP686&ei=lP0oWp6lC8HA0gTii5OYCA&q=Phenirat%E3%80%80%E8%96%AC&oq=Phenirat%E3%80%80%E8%96%AC&gs_l=psy-ab.3...6163.9702.0.10887.8.8.0.0.0.0.464.1301.0j5j4-1.6.0....0...1c.1j4.64.psy-ab..2.1.175...0i30k1.0.6uq63cT3Y70

下記はGoogle検索で一番下に出ていました。

2017/07/06 - 芳香剤は受容体を活性するのみならず、ORの拮抗薬としての働きも有する。カルシウムイメージング技術を使用し、サンダロール(登録商標)との同時適用において、オキシフェニロン(登録商標)及びPheniratの芳香剤は、サンダロール(登録商標)誘発されたカルシウムシグナルを顕著に低下させる拮抗薬として特定された(割合は1:1、1mMである)。同時適用において、サンダロール(登録商標)誘発されたカルシウムシグナルに影響を与えないジメトール芳香剤は、コントロールのために使用された。

ウエスタンブロット法
https://kotobank.jp/word/%E3%82%A6%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E6%B3%95-438597

タンパク質の検出法で,電気泳動後,特異抗体や特異的リガンドを用いて,目的とする特定のタンパク質を検出する方法.

関連ブログ

表皮ケラチノサイトにサンダルウッドの香りに対する嗅覚受容体発見 Science dailyより
http://aromahonjin.way-nifty.com/blog/2017/04/post-8448.html

Olfactory receptors in the skin: Sandalwood scent facilitates wound healing, skin regeneration
皮膚の嗅覚受容体:サンダルウッドの香りは創傷治癒、皮膚再生を促進する


血液、心臓および肺の細胞にも鼻と同じ嗅覚受容体がある。
http://aromahonjin.way-nifty.com/blog/2017/04/post-8448.html

Do Cells in the Blood, Heart and Lungs Smell the Food We Eat?
血液、心臓および肺の細胞は私たちが食べた食品の匂いを嗅ぎますか?

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December 02, 2017

無髄の触覚求心性神経信号のタッチは島皮質に投影する。

前回もタッチの文献を翻訳しました。今回もそれの続きになります。

秒速3-10 センチの速さでなでる「心地よさ」の評価が最大になると下記の日本語文献で紹介されていた。島皮質は痛みの体験や喜怒哀楽や不快感、恐怖などの基礎的な感情の体験に重要な役割をはたしています。タッチは島皮質に投影するので気分改善役に立つのだと思いました。

Unmyelinated tactile afferents signal touch and project to insular cortex.

無髄の触覚求心性神経信号のタッチは島皮質に投影する。

tactile afferents: 触覚求心性神経
insular cortex 島皮質

Olausson H1, Lamarre Y, Backlund H, Morin C, Wallin BG, Starck G, Ekholm S, Strigo I, Worsley K, Vallbo AB, Bushnell MC.
Author information
1
Department of Clinical Neurophysiology, Sahlgrenska University Hospital, S-413 45 Göteborg, Sweden.

Abstract

要旨

There is dual tactile innervation of the human hairy skin: in addition to fast-conducting myelinated afferent fibers, there is a system of slow-conducting unmyelinated (C) afferents that respond to light touch. In a unique patient lacking large myelinated afferents, we found that activation of C tactile (CT) afferents produced a faint sensation of pleasant touch.

ヒトの有毛皮膚には二重の触覚神経支配があります。高速伝導性有髄求心性線維に加えて、軽いタッチに反応する低速伝導性無髄求心性神経線維があります。多くの有髄求心性神経線維が欠損している特異な患者において、私たちは、C触覚(CT)求心性神経の活性化が軽やかなタッチのほのかな感覚を産生したことを発見した。

Functional magnetic resonance imaging (fMRI) analysis during CT stimulation showed activation of the insular region, but not of somatosensory areas S1 and S2. These findings identify CT as a system for limbic touch that may underlie emotional, hormonal and affiliative responses to caress-like, skin-to-skin contact between individuals.

触覚求心性神経(CT)の刺激中の機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)分析は、領域の活性化を示したが第一および第二の体性感覚野の活性化は示さなかった。これらの研究結果は、触覚求心性神経(CT)を個人間の愛撫のような皮膚と皮膚との接触に対する情動的、ホルモン的および親和的反応の基礎となる辺縁系タッチのシステムとして同定しています。

somatosensory areas 体性感覚野

参考文献

Unmyelinated tactile afferentsを調べていた時に見つけました。

手の動きと結びついた触質感認知の研究

Tactile perception of material surfaces related to hand movements

https://kaigi.org/jsai/webprogram/2017/pdf/712.pdf

この3-10 cm/sec の速さで実験参加者の腕を筆でなぞったときに、実験参加者のなぞりに対する「心地よさ」の評価が最大になることも知られていることから[Löken 2009]、親しい人とのスキンシップと関連する手の動きと考えられる。また、C-tactileafferent という有毛部の機械受容器の応答も同じなぞり速さにおいて最大になることが知られており[Löken 2009] 、C-tactileafferent が手のなぞり動作と心地よさの評価を結びつけていると予想される。


島皮質
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E7%9A%AE%E8%B3%AA

島皮質(とうひしつ、羅: insula、独: Inselrinde、英: insular cortex)は大脳皮質の一領域。脳葉のひとつとして島葉(insular lobe)と呼ばれたり、脳回の一つとして島回(insular gyrus)と呼ばれたりする。

情動における役割 (辺縁系との関係)[編集]

機能的に言えば、島皮質は収束した情報を処理することで、感覚的な体験のための情動に関連した文脈情報を生み出す。より具体的に言えば、島皮質前部は嗅覚、味覚、内臓自律系、及び辺縁系の機能により強く関わり、島皮質後部は聴覚、体性感覚、骨格運動とより強く関わっている。機能的核磁気共鳴画像法 (fMRI) による研究によって、島皮質は痛みの体験や喜怒哀楽や不快感、恐怖などの基礎的な感情の体験に重要な役割を持つことが示された。

脳機能イメージングによって島皮質と、食べ物や薬物に対する渇望などの意識的な欲望との関連が示唆されている。これらの感情に共通することとして、これらが身体の状態を変化させる点と、高い主観的特性と関連付けられる点がある。島皮質は身体状態に関連する情報を、高次認知と情動の処理に統合する役割を持つと位置付けられる。島皮質は視床を介して恒常性に関する求心性の経路から入力を受け、扁桃体や線条体腹側部や、前頭眼窩野などの、他の多くの辺縁系に関連した領域に出力する。

核磁気共鳴画像法 (MRI) による研究において、瞑想する人は右の島皮質後部が有意に厚いことが示されている[3]。

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