新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とミトコンドリアの健康:ライフスタイルと老化の影響の序文2
SARS-CoV-2 and mitochondrial health: implications of lifestyle and ageing
https://immunityageing.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12979-020-00204-x
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とミトコンドリアの健康:ライフスタイルと老化の影響の序文2
Introduction
序文2
It therefore seems that maintaining “mitochondrial health” is vital, which probably correlates with an effective mitochondrial reserve induced by factors like physical activity, such that when the system is “stressed” (e.g., by a virus), it can cope. Although the virus may only infect certain cells, the immune response is global and dependent on mitochondrial function in multiple tissues and organs. What is clear is that severity is associated with the hyperinflammation syndrome and involves dysregulation of many different cell types [27]. This is to be expected, as throughout evolution, viruses have evolved to manipulate the immune system to hide from it, and can invoke immunosuppression, which in itself can become pathological, for instance, by modulating T-cells [28, 29].
したがって、「ミトコンドリアの健康」を維持することは重要であって、おそらく身体活動などの要因によって誘発される効果的ミトコンドリア呼吸予備能と相関し、組織が「ストレス」(例えばウイルスによって)に対処できる可能性が高いと思われる。ウイルスは特定の細胞にのみ感染する可能性がありますが、免疫応答は全身的であり、複数の組織および器官におけるミトコンドリア機能に依存します。はっきりしているのは、重症度は過剰な炎症症候群に関連しており、多くの異なる細胞型の調節障害を伴います。これは、進化を通じて、ウイルスは免疫系を操作して、そこから隠れために進化して、それ自体が免疫抑制を呼び起こすことができ、例えばT細胞を調節することによってです。
mitochondrial reserve:ミトコンドリア能
調べていたら予備呼吸能の言葉見つけたのでミトコンドリア能では分かりずらいのでミトコンドリア予備呼吸能にしました。また、細胞のミトコンドリア予備呼吸容量(RRC)の言葉もありました。
hyperinflammation過剰な炎症
immunosuppression 免疫抑制
It now seems that the spike protein of SARS-CoV-2 can bind to T-cell receptors (TCRs), acting as a super-antigen and causing excessive activation of the adaptive immune system – potentially resulting in the hyperinflammatory syndrome [30]. This is perhaps relevant as persistent antigenic stimulation can lead to T-cell exhaustion, which is associated with decreased oxidative phosphorylation and loss of mitochondrial function despite enhanced glycolysis – but can be reversed using anti-oxidants [31]. Data is now showing that COVID-19 patients do have populations of T-cells displaying mitochondrial dysfunction, as well as altered mitochondrial markers in monocytes – hinting that immune-metabolic phenotyping could be used to understand disease pathogenesis and possible treatments; this could include targeting mitochondria [32]. In short, the immune system itself could well be a target for this virus. Apart from the virus targeting the TCR as a super antigen, there is evidence that other than it binding to the angiotensin converting enzyme (ACE) as its main receptor, it may also bind receptors on immune cells, such as CD147 and CD26 [33], or neuropilin-1 (Nrp-1) [34, 35].
これは、たぶん持続的な抗原刺激がT細胞の疲弊につながり、解糖が増強されたにもかかわらず酸化リン酸化の減少とミトコンドリア機能の喪失につながる可能性がありますが、抗酸化剤を使用して逆転させることができます[31].SARS-CoV-2のスパイクタンパク質は、T細胞受容体(TRS)に結合し、スーパー抗原として機能し、適応免疫系(獲得免疫)の過剰な活性化を引き起こし、結果的に過剰な炎症症候群を引き起こす可能性がある[30]データは、COVID-19患者がミトコンドリア機能不全を示すT細胞集団を有し、同様に単球におけるミトコンドリアマーカー変化を有することを示している- 免疫代謝表現型が疾患の病因性および可能な治療法を理解するために使用できることを示唆している。これはミトコンドリアを標的にすることを含む可能性がある [32]要するに、免疫系自体がこのウイルスの標的になる可能性があります。スーパー抗原としてTCRを標的とするウイルスとは別に、アンジオテンシン変換酵素(ACE)を主受容体として結合する以外に、モノクロール抗体CD147やCD26[33]、またはニューロピリン-1(Nrp-1)[34,35]などの免疫細胞上の受容体に結合する可能性があるという証拠がある。
T-cell receptors (TCRs) :T細胞受容体(TRS)
super-antigen スパー抗原
antigenic stimulation 抗原刺激
T-cell exhaustion T細胞の疲弊
oxidative phosphorylation 酸化的リン酸化
glycolysis 解 糖
angiotensin converting enzyme (ACE) アンジオテンシン変換酵素 (ACE)
adaptive immune system 適応免疫系
CD147/cluster of differentiation 147 . 分化抗原群
CD分類(シーディーぶんるい)とは、ヒト白血球を主としたさまざまな細胞表面に存在する分子(表面抗原)に結合するモノクローナル抗体の国際分類。
NRP1, Neuropilin-1ニューロピリン-1
We have structured this paper to first review the now established data on general mitochondrial function and health in relation to “inflammaging”, followed by the evidence suggesting that the SARS-CoV-2 virus itself manipulates mitochondrial function and what we might learn from bats – which are thought to be its natural host. From this we propose that a poor lifestyle accelerates “inflammaging” which is associated with mitochondrial ill-health, and in some populations this predisposes them to a worse outcome. In the second part of the paper we discuss the implication of this idea in relation
to current and suggested drug-based treatments and vaccine efficacy, the “long-COVID” syndrome, as well as how environmental factors may make some people more vulnerable. Understanding these concepts may help inform clinical strategy.
この論文は、まず「炎症」に関連して一般的なミトコンドリア機能と健康に関する現在確立されたデータを見直し、続いてSARS-CoV-2ウイルス自体がミトコンドリア機能を操作し、コウモリから何を学ぶ可能性があるかを示唆する証拠を構成した。このことから、みだれたライフスタイルがミトコンドリア障害に関連する「炎症」を加速し、一部の集団でこれは悪化する可能性があることを提案する。論文の第2部では、現在および提案されている薬物ベースの治療法とワクチンの有効性、「長いコロナウイルス感染症COVID」症候群、同様にいかに環境要因が一部の人々をより脆弱にすることに関連してこの考えの意味を議論する。これらの概念を理解することは、臨床戦略を知らせるのに役立つかもしれません 。
用語
TCR T細胞受容体
T-Cell Receptor (TCR) の概要
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/cell-analysis/signaling-pathways/t-cell-receptor-tcr/t-cell-receptor-tcr-overview.html
T細胞は、免疫反応において大きな役割を果たすリンパ球のサブセットです。 TCR(T細胞受容体)は、内在性膜タンパク質の複合体であって、抗原に反応してT細胞を活性化します。 TCR の刺激は、抗原提示細胞の MHC(主要組織適合性複合体)分子によって引き起こされます。この分子は、抗原ペプチドを TCR 複合体に提示し、一連の細胞内シグナル カスケードを誘導します。 TCR が関与することにより正の(シグナル増強)カスケードと負の(シグナル減衰)カスケードが始まり、最終的に細胞の増殖や分化、サイトカインの産生、活性化誘導細胞死などが誘導されます。 これらのシグナル伝達カスケードは、T 細胞の成長やホメオスタシス、活性化、エフェクタ機能の獲得、アポトーシスなどを調節します1,2。
スーパー抗原
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E6%8A%97%E5%8E%9F#:~:text=%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E6%8A%97%E5%8E%9F%EF%BC%88%E8%8B%B1%EF%BC%9ASuperantigens%EF%BC%89,%E7%B3%BB%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E9%98%B2%E5%BE%A1%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E5%83%8D%E3%81%8F%E3%80%82
スーパー抗原(英:Superantigens)(略称:SAg)はT細胞を非特異的に多数活性化させ、多量のサイトカインを放出させる抗原である。スーパー抗原は病原性の微生物(細菌の他、ウイルスやマイコプラズマも含む)によって産生され[1]、微生物側にとって免疫系に対する防御として働く[2]
T細胞の疲弊を調べていたときにみつけました。
Exhaustion
https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2716.html
exhaustion(疲弊).抗原の長期的な曝露によって,T細胞上にPD-1,CTLA-4,TIM-3などさまざまな共抑制分子(後述)が誘導される結果,T細胞が機能不全状態に陥ること.慢性感染症やがんの際に,T細胞の不応答性が誘導される原因と考えられている.
酸化的リン酸化
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%B8%E5%8C%96%E7%9A%84%E3%83%AA%E3%83%B3%E9%85%B8%E5%8C%96
酸化的リン酸化(さんかてきリンさんか、oxidative phosphorylation)とは、電子伝達系に共役して起こる一連のリン酸化(ATP合成)反応を指す。細胞内で起こる呼吸に関連した現象で、高エネルギー化合物のATPを産生する回路の一つ。好気性生物における、エネルギーを産生するための代謝の頂点といわれ、糖質、脂質、アミノ酸などの代謝がこの反応に収束する。
Mitochondrial Reserveを調べていた時に見つけた記事
Is There a Link between Mitochondrial Reserve Respiratory Capacity and Aging?
ミトコンドリア予備呼吸能と老化の間にリンクはありますか?
https://www.hindawi.com/journals/jar/2012/192503/
解糖
https://lifescience-study.com/1-the-role-of-glycolysis/
好気呼吸では「解糖→クエン酸回路→電子伝達系」という過程においてATPとしてエネルギーを生み出します。解糖は、グルコース(C6)を分解してピルビン酸(C3)を生じる過程でATPを生み出す経路のことです。
Neuropilin-1を調べていた時に見つけました。
新型コロナウイルスの第二の受容体が発見される(速報)
https://www.igakuken.or.jp/r-info/covid-19-info27.html
ACE2が、ウイルスが細胞に入るためのドアの鍵であるとしたら、Neuropilin-1 はウイルスをドアまで連れてくる案内人のような役割を果たします。ACE2は大抵の細胞で低いレベルでしか発現されていないので、ウイルスがドアを発見するのは容易ではありません。そこでNeuropilin-1などの、他の因子が、これを助けてあげる必要があります。
さらに、これらの論文では、Neuropilin-1とSpikeタンパクとの結合を阻害するモノクローナル抗体や薬剤により、細胞レベルでのSARS-CoV-2の感染を抑制することができたと報告しています。
今回の発見により、SARS-CoV-2の感染の新たなメカニズムが解明されました。また、新しい知見に基づき、SARS-CoV-2の治療薬の新たな標的が同定され、今後、新型コロナウイルスの効果的な治療薬の開発に向けて、さらに研究が進むものと期待されます。
SARS-CoV-2細胞侵入の構造的 および機能的メカニズム
https://www.abcam.co.jp/content/structural-and-functional-mechanism-of-sars-cov-2-cell-entry-3
その他のSARS-CoV-2細胞侵入メカニズム
ACE2への結合に加えて、SARS-CoV-2ウイルスが他の細胞表面分子にも結合して細胞侵入できると示唆する研究結果が増えてきています。SARS-CoVと比べたSARS-CoV-2の感染力の強力さは、ウイルスが宿主細胞に侵入できるようにする細胞受容体の数の多さによって説明できる可能性があります。
ニューロピリン(NP)1と2の両方は、SARS-CoV-2 Sタンパク質の切断型に結合して、宿主細胞の侵入を仲介することが示されています11, 12。ニューロピリンタンパク質はニューロンで発現しているため、ウイルスの神経系への侵入を許してしまいます。この侵入はヒトCOVID-19剖検の神経病理学的分析でも観察されています12 。NP受容体の抗体遮断、受容体変異誘発および構造の研究結果はすべて、SARS-CoV-2 Sタンパク質の細胞受容体としてのNPの機能を裏付けています11, 12。既知のACE2受容体に加えて、細胞表面のNP受容体への結合はSARS-CoV-2への感染を増強することを示唆しており、SARS- CoV と比較した場合に、SARS-CoV-2感染の組織向性の増強の原因となっているかもしれません11, 12。
初期の研究では、SARS-CoV-2 Sタンパク質が細胞表面のCD147に結合し、その後細胞に侵入すると示唆されました13。この研究で行われたin vitro抗ウイルス試験では、メプラズマブと呼ばれるSタンパク質とCD147細胞表面受容体との相互作用を遮断する抗CD147ヒト化抗体が、ウイルスの細胞侵入を顕著に阻害することが示唆されました。この抗体がCOVID-19を治療する可能性については臨床試験が現在進行中です14。血糖値が高いとCD147の発現が上昇することが明らかになっているため、上記の結果はCOVID-19において糖尿病が予後不良の要因の一つとなっていることを説明できるかもしれません15。
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