植物の自然免疫におけるプロテアーゼの欠かせない役割PUBMEDより
Indispensable Role of Proteases in Plant Innate Immunity https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5855851/
植物の自然免疫におけるプロテアーゼの欠かせない役割
Plant defense is achieved mainly through the induction of microbe-associated molecular patterns (MAMP)-triggered immunity (MTI), effector-triggered immunity (ETI), systemic acquired resistance (SAR),induced systemic resistance (ISR), and RNA silencing. Plant immunity is a highly complex phenomenon with its own unique features that have emerged as a result of the arms race between plants and pathogens.
植物の防御は、主に微生物関連分子パターン(MAMP)誘導免疫(MTI)、エフェクタ誘発免疫(ETI)、全身獲得抵抗性(SAR)、誘導全身抵抗(ISR)、およびRNAサイレンシングの誘導によって達成される。植物免疫は、植物と病原体の間の軍拡競争の結果として出現した独自の特徴を持つ非常に複雑な現象です。
microbe-associated molecular patterns (MAMP)-病原微生物関連分子パターン
triggered immunity (MTI), 誘導免疫(MTI)
effector-triggered immunity (ETI),エフェクター誘導免疫(ETI)
systemic acquired resistance (SAR) 全身獲得抵抗性(SAR)
induced systemic resistance (ISR) 全身誘導抵抗性(ISR)
RNA silencing RNA サイレンシング
However, the regulation of these processes is the same for all living organisms, including plants, and is controlled by proteases. Different families of plant proteases are involved in every type of immunity: some of the proteases that are covered in this review participate in MTI, affecting stomatal closure and callose deposition. A large number of proteases act in the apoplast, contributing to ETI by managing extracellular defense.
しかし、これらのプロセスの制御は、植物を含むすべての生物に共通しており、プロテアーゼによって制御されている。植物のプロテアーゼは、さまざまな種類の免疫に関与している。この総説で取り上げたプロテアーゼのいくつかは、微生物関連分子パターン誘導性免疫(MTI)に関与し、気孔閉鎖やカロースの沈着に影響を与える。また、多くのプロテアーゼがアポプラストで作用し、細胞外防御を管理することでエフェクター誘導免疫(ETI)に貢献している。
stomatal closure 気孔閉鎖
callose deposition カロース沈着
apoplastアポプラスト(植物体内において細胞膜より内側を除いた、水溶液(アポプラスト液)で満たされた空間の総体である。)
MAMP-triggered immunity:MTI:微生物関連分子パターン誘導性免疫
MAMP :Microbe-associated molecular pattern微生物関連分子パターン
A vast majority of the endogenous proteases discussed in this review are associated with the programmed cell death (PCD) of the infected cells and exhibit caspase-like activities. The synthesis of signal molecules, such as salicylic acid, jasmonic acid, and ethylene, and their signaling pathways, are regulated by endogenous proteases that affect the induction of pathogenesis-related genes and SAR or ISR establishment. A number of proteases are associated with herbivore defense.
この総説で取り上げた内因性プロテアーゼの大部分は、感染細胞のプログラム細胞死(PCD)に関連しており、カスパーゼ様活性を示す。サリチル酸、ジャスモン酸、エチレンなどのシグナル分子の合成やそれらのシグナル伝達経路は、感染特異的タンパク質の誘導や全身獲得抵抗性(SAR)または全身誘導抵抗性(ISR)の確立に影響を与える内因性プロテアーゼによって制御される。多くのプロテアーゼが捕食者の防御に関連している。
endogenous proteases 内在性プロテアーゼ
programmed cell death (PCD) プログラム細胞死
caspase-like activities カスパーゼ様活性
pathogenesis-related genes感染特異的タンパク質(植物が病原体に感染した際に、植物体内で生成されるタンパク質の総称[1]。PRタンパク質ともいう。)
In this review, we summarize the data concerning identified plant endogenous proteases, their effect on plant-pathogen interactions, their subcellular localization, and their functional properties, if available, and we attribute a role in the different types and stages of innate immunity for each of the proteases covered.
この総説では、同定された植物の内因性プロテアーゼに関するデータ、植物と病原体の相互作用への影響、細胞内での局在、機能的特性(可能であれば)をまとめ、自然免疫の様々な種類と段階における役割を、取り上げたプロテアーゼごとに説明している。
Keywords: plant proteases, plant immunity, MTI, ETI, SAR, ISR, RNA silencing
キーワード:植物のプロテアーゼ、植物免疫、誘導免疫(MTI)、エフェクター誘導免疫(ETI)、全身誘導抵抗性(ISR)、RNA サイレンシング
用語
植物の自然免疫研究の最前線植物免疫の活性化機構と病原菌の感染戦略
https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=1322
植物は,微生物の種類を識別する能力をもち,病原菌に対しては感染を阻止するための防御反応を誘導し,共生菌に対しては,菌の侵入を受け入れるための共生反応を誘導する.このような微生物の識別は,植物の細胞表面あるいは細胞内に存在する受容体を介して行われる.植物の病原菌認識受容体の構造や働きは,動物の自然免疫で働く受容体と酷似していることから,病原菌に対する植物の防御応答は,植物免疫と呼ばれている.一方,病原菌は,エフェクターと総称される分子を獲得し,その働きにより植物の免疫反応を阻止し,感染を成立させている.そこで,ここでは植物免疫の誘導機構と,エフェクターによる病原菌の感染戦略に関して,最近の知見を紹介する.
Key words:?植物; 免疫; 受容体; 病原; エフェクター
デンジャーシグナル認識にもとづく植物の免疫制
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphytopath/81/4/81_322/_pdf
はじめに
植物は,いわゆる抗原抗体反応に代表される獲得免疫や 全身をパトロールする免疫に専門化した細胞を持たない. その代わりに,個々の細胞が生来のゲノム上にコードされ た一群の免疫センサーに依存して防御応答を誘導する自然 免疫のみに依拠している.植物の免疫システムは,互いに 関連・依存し合う二つのクラスの免疫センサーが病原体の 侵入・感染を認識して防御応答を誘導する二段構えの仕組 みになっている(Chisholm et al., 2006; Jones and Dangl, 2006). 自然免疫は動物の免疫システムにおいても重要な役割を 担っており,植物免疫に関する研究は,動植物を問わず自 然免疫の普遍的な枠組みや制御原理を理解する上で大きく 貢献してきている(Ronald and Beutler, 2010). 植物が微生物を認識して最初に誘導する防御応答はパ ターン誘導性免疫(Pattern-triggered immunity: PTI)と呼ば れる.細胞表面のパターン認識受容体(PRR)と呼ばれる 免疫センサーで,微生物に特有の分子(Microbe-associated molecul ar patterns: MAMPs)や植物細胞の破砕成分など内 生のダメージ・デンジャーシグナル因子(Damage/Dangerassociated molecular patterns: DAMPs)を察知することで誘 導される.PTI は,植物がその種に適応していない病原菌 種に対してあらゆる系統の感染を防いで全く宿主とならな い抵抗性(非宿主抵抗性)や,適応型の病原体に対して感 染や病徴を最小限に食い止めて被害の拡大を防ぐ抵抗性(基 礎抵抗性)において中心的な役割を果たしている.しかし, 宿主に適応した病原体は,エフェクターと総称される,一 連の感染促進因子(タンパク質や毒素)を宿主細胞内に注 入して PTI を阻害することで感染を成立させる.これに対 して,特定のエフェクター(非病原性因子)に対応する抵 抗性遺伝子を有する宿主では,エフェクターの認識に基づ き激しい防御応答が誘導されて強く病原体の感染を抑制する。
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