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May 15, 2023

迷走神経刺激は条件付恐怖の消去を促進し、腹内側前頭前野(vmPFC)から扁桃体への経路の可塑性を調節します。PUBMEDより

Vagus nerve stimulation enhances extinction of conditioned fear and modulates plasticity in the pathway from the ventromedial prefrontal cortex to the amygdala

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25278857/

迷走神経刺激は条件付恐怖の消去を促進し、腹内側前頭前野(vmPFC)から扁桃体への経路の可塑性を調節します。

Abstract

要旨

Fearful experiences can produce long-lasting and debilitating memories. Extinction of the fear response requires consolidation of new memories that compete with fearful associations. Subjects with posttraumatic stress disorder (PTSD) show impaired extinction of conditioned fear, which is associated with decreased ventromedial prefrontal cortex (vmPFC) control over amygdala activity. Vagus nerve stimulation (VNS) enhances memory consolidation in both rats and humans, and pairing VNS with exposure to conditioned cues enhances the consolidation of extinction learning in rats.

恐怖な経験は、長期間にわたって持続し、記憶低下を生み出すことがあります。恐怖の関連付けと競合する新しい記憶の固定化が恐怖反応の消去に必要です。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者は、条件づけられた恐怖の消去が障害されており、その原因は扁桃体の活動に対する腹内側前頭前野(vmPFC)の制御が低下していることと関連しています。迷走神経刺激(VNS)は、ラット人間の両方で記憶の固定化を高め、VNSを条件づけられた刺激と組み合わせることでラットの消去学習の固定化を促進します。

Here we investigated whether pairing VNS with extinction learning facilitates plasticity between the infralimbic (IL) medial prefrontal cortex and the basolateral complex of the amygdala (BLA). Rats were trained on an auditory fear conditioning task, which was followed by a retention test and 1 day of extinction training. Vagus nerve stimulation or sham-stimulation was administered concurrently with exposure to the fear-conditioned stimulus and retention of fear conditioning was tested again 24 h later.

ここでは、迷走神経刺激VNSと消去学習を組み合わせることで、腹内側前頭前野(vmPFC)の下辺縁皮質と扁桃体基底外側複合体(BLA)の間の可塑性が促進されるかどうかを検討した。ラットは、聴覚的恐怖条件付け課題で訓練され、その後、保持テストと1日間の消去訓練が行われた。恐怖条件付け刺激への曝露と同時に迷走神経刺激または偽刺激を行い、24時間後に再び恐怖条件付けの保持をテストした。

infralimbic (IL)  下辺縁皮質
basolateral complex 基底外側複合体

Vagus nerve stimulation-treated rats demonstrated a significant reduction in freezing after a single extinction training session similar to animals that received 5× the number of extinction pairings. To study plasticity in the IL-BLA pathway, we recorded evoked field potentials (EFPs) in the BLA in anesthetized animals 24 h after retention testing. Brief burst stimulation in the IL produced LTD in the BLA field response in fear-conditioned and sham-treated animals. In contrast, the same stimulation resulted in potentiation of the IL-BLA pathway in the VNS-treated group. The present findings suggest that VNS promotes plasticity in the IL-BLA pathway to facilitate extinction of conditioned fear responses (CFRs).

迷走神経刺激処理ラットは、1回の消去訓練セッション後、5倍の消去ペアリングを受けた動物と同様に、凍りつきの有意な減少を示した。下辺縁皮質IL-基底外側複合体 BLA経路の可塑性を調べるために、保持テストの24時間後に麻酔した動物でBLAの誘発電位(EFP)を記録しました。ILへの短時間のバースト刺激は、恐怖条件付け動物および偽薬投与動物において、BLAのフィールド反応に長期増強(LTP)をもたらした。一方、VNS投与群では、同じ刺激でIL-BLA経路が増強された。このことから、迷走神経刺激VNSはIL-BLA経路の可塑性を促進し、条件付恐怖反応(CFR)の消去を容易にすることが示唆された。

evoked field potentials (EFPs) 誘発電界電位(EFP)

シナプス可塑性

シナプス前・後細胞間の伝達効率が,長期的に変化する現象をあらわす言葉.その代表例である長期増強(Long-term potentiation:LTP)は,シナプスの伝達効率が増加する現象である.またその逆である伝達効率が減少する現象を長期抑圧(long-term depression:LTD)と呼称される.実験医学onlineより

LTP(long term potentiation):長期増強(LTP)

Keywords: LTD; LTP; PTSD; anxiety; in vivo; local field potentials.

キーワード 長期抑圧(LTD)、長期増強(LTP)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安、イン・ビボ(生体内で)、局所集合電位

local field potential:局所集合電位
局所集合電位(local field potential)は、脳や脊髄といった神経組織の神経細胞により生じる電気信号を局所的に記録したもので、その領域の数千の細胞のシナプス後電位を反映しています。 局所集合電位は、睡眠中や行動中の脳活動のモニターにしばしば用いられます。生体医工学ウェブ辞典より

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

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腹内側前頭前野と偏桃体について調べたときにみつけた記事

脳科学が証明した、緊張がほぐれる “意外すぎる” 行動

https://studyhacker.net/kincyou-seigyo

興奮と緊張を防ぐ脳内メカニズム

2019年8月27日にオンライン公開(学術誌『NeuroImage』202巻に掲載)された、米ラトガース大学、高知工科大学、名古屋大学、情報通信研究機構ら共同グループの研究は、興奮状態(緊張やプレッシャー)を抑制して、パフォーマンスを向上させる人間の脳内メカニズムを解明したそうです。

その脳内メカニズムとは、脳の「腹内側前頭前野」が「扁桃体」を抑制的にコントロールすること(※後述)。また、「腹内側前頭前野」から「扁桃体」への情報伝達がより強い人のほうが、課題の成績が良かったのだそう。

これらを受け、研究者らは、強いストレスやプレッシャーがあっても最大限に力を発揮できるよう鍛える、トレーニングの開発に活かせると述べています。

「腹内側前頭前野」と「扁桃体」について

脳の「扁桃体」は、わたしたちの感情の中枢。怒り・恐怖・不安といった情動の基盤となる神経回路のひとつです。何かの刺激を受けると、その時々ですぐに反応することが特徴です。

その一方で「腹内側前頭前野」は、物事の価値を判断して、中長期的な利益をはかり、衝動や欲求を抑える工程にかかわるとのこと。

「腹内側前頭前野」を元気にする方法

東北学院大学教養学部 准教授の金井嘉宏氏は、日本心理学会の機関誌で、社交不安症について説明しています。社交不安症患者は、自分のネガティブな思考やイメージに注意を向ける「自己注目」によって、不安を維持してしまうのだとか。

しかし、向社会的・利他的な行動や考え方をすると、他者に注意が向き、この「自己注目」を減らしてくれるそうです。人間関係を築いていくための社会的行動に関与するホルモンで、抗ストレス作用がある「オキシトシン」の発生にもつながるといいます。

それに、向社会的・利他的な行動や考え方は、脳の「腹内側前頭前野」までも活性化してくれるのだとか。

緊張に負けないための心がけとは?

向社会的な行動は、「他者の利益となるような自発的な行動」と定義されています。利他的な行動とは、「自己の損失をかえりみず他者の利益を図ること」です。

京都大学大学院教授で社会工学者の藤井聡氏は、心の奥底で何に焦点を当てているかに着目した理論を主張し、そこから利他的な人ほど「得」が増えると導き出しました。

これまでの内容をまとめると、他者のために行動しようと心がける・実際に行動することで、

脳の「腹内側前頭前野」が活性化する

緊張やプレッシャーを抑制しやすくなる

緊張する場でもパフォーマンスを維持できる

ストレスに強くなる

「得」が増える

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