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March 09, 2024

COVID-19ワクチンメッセンジャーRNAの経胎盤感染:ワクチン接種後の胎盤、母体、および臍帯血分析による証拠

COVID-19ワクチンメッセンジャーRNAの経胎盤感染:ワクチン接種後の胎盤、母体、および臍帯血分析による証拠

Transplacental transmission of the COVID-19 vaccine messenger RNA: evidence from placental, maternal, and cord blood analyses postvaccination

https://www.ajog.org/article/S0002-9378(24)00063-2/pdf?fbclid=IwAR2rU8x1wsSfPVR7ZDrKezh71w_4LzLtxDnB-mEMsW4PQVA1ajuZGq4G3uA

Transplacental transmission 経胎盤感染 (胎盤を介して病原体が胎児に感染)
Placental 胎盤(子宮内にあって、胎児と臍帯(さいたい)?によってつながり、母体との物質交換を仲介する海綿状・盤状の器官。胎児の娩出(べんしゅつ)?のあと脱落する。)

cord blood 臍帯血(お母さんと赤ちゃんを結ぶへその緒を「さい帯」と言い、そのさい帯と胎盤の中に含まれる血液を「さい帯血」と言います。)

CONCLUSION: Our findings suggest that the vaccine mRNA is not localized to the injection site and can spread systemically to the placenta and umbilical cord blood. The detection of the spike protein in the placental tissue indicates the bioactivity of the vaccine mRNA that reach the placenta. Notably, the vaccine mRNA was largely fragmented in the umbilical cord blood and, to a lesser extent, in the placenta. These 2 cases demonstrate the ability of the COVID-19 vaccine mRNA to penetrate the fetal-placental barrier and to reach the intrauterine environment

結論:我々の知見は、ワクチンmRNAは注射部位に局在せず、胎盤および臍帯血に全身的に転移する可能性があることを示唆している。胎盤組織におけるスパイクタンパク質の検出は、胎盤に到達したワクチンmRNAの生物活性を示す。特筆すべきことに、ワクチンmRNAは臍帯血中ではほとんど断片化されており、胎盤中ではより少ない程度であった。これらの2症例は、COVID-19ワクチンmRNAが胎児-胎盤関門を通過し、子宮内環境に到達する能力を示している。

American Journal of Obstetrics & Gynecology MONTH 2024
米国産婦人科学会(ACOG)

関連文献
*胎盤関門における薬物透過
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dmpk1986/15/4/15_4_403/_pdf/-char/ja#:~:text=%E8%83%8E%E7%9B%A4%E3%81%AF%E6%AF%8D%E4%BD%93%20%E3%81%A8%E8%83%8E%E5%85%90,%E3%81%A8%E5%91%BC%E3%81%B0%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%EF%BC%8E

胎盤関門における薬物透過 宇都ロ 直 樹 Naoki UTOGUCHI 胎盤 は母体 と胎児 を隔ててお り,母体一胎児間の栄養 輸送,ガス交換 ,ホルモン産生な ど様 々な機能 を有 して い る.母体血 と胎 児血 は混 じり合 うことな く,胎盤は母 体一 胎児間の物質透過 の関門 として機能 してお り,これ は胎盤関門 と呼ばれている.この胎盤関門機能 は トロホブラストが担 っていると考えられている.薬物の胎児毒性 や催奇性の点か ら,胎盤関門におけ る 薬物移行の研究は重要 である.

*胎盤はウイルス感染に特化した防御機構を持つことが明らかに 〜胎児の胎内ウイルス感染のメカニズム解明に向けて期待〜
https://www.ncchd.go.jp/press/2023/0419.html

プレスリリースのポイント

本研究では、ヒト胎盤にはウイルス防御に重要な自然免疫系受容体である二本鎖RNA受容体が発現しており、他の自然免疫系受容体の発現は認められないことを初めて見出しました。

また二本鎖RNAにより、胎盤の細胞では抗ウイルス作用を持つサイトカインであるインターフェロン(IFN)が産生され、また細胞死が誘導されることを明らかにしました。
こうしたIFN産生は血球細胞などでも認められますが、細胞死※3は胎盤に特徴的です。

以上の結果は、胎盤がウイルスに特化した防御機構を持っていることを示唆しています。


*哺乳類の胎盤形成にはウイルスが関与しており、その遺伝子は順次置き換わることができる

https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2015/20151005-1.html

発表者
今川 和彦(東京大学大学院農学生命科学研究科 実験動物資源科学・附属牧場 教授)

発表のポイント

◆哺乳類のゲノムには、過去に感染した内在性レトロウイルス遺伝子の断片が多く存在している(全ゲノムの8%)。それらの内在性レトロウイルス遺伝子は哺乳類の胎盤獲得に働いているだけではなく、機能性の高いウイルス遺伝子と順次置き換わることができる。

◆哺乳類は胎盤・栄養膜細胞の細胞融合を促進させるために内在性レトロウイルスの機能を活用していること、さらに、もっと良い機能を持つ内在性レトロウイルスが入り込んだ場合、それを積極的に活用している。進化途上で同じ機能を別の新しいウイルス遺伝子が担うことから機能をバトンタッチするという「Baton pass仮説」を提唱した。

◆胎盤形成を含む妊娠の成立には内在性レトロウイルス遺伝子の機能が必須であるから、胎盤形成と胎盤機能の解析には、いままでの機能遺伝子の評価だけではなく、内在性レトロウイルス遺伝子発現とその機能を評価する必要がある

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