《ある世界とは何か》《天地一貫のいのちと人類共通の生命観》
《ある世界とは何か》《天地一貫のいのちと人類共通の生命観》
《第2回 前半》
《ある世界とは何か》
《What Is the World That Is?》
《サブタイトル|Subtitle》
《天地一貫のいのちと人類共通の生命観》
《Life United Through Heaven and Earth and Humanity’s Shared Vision of Life》
《リード|Lead》
前回まで、
《心神》
《我欲我見》
《異心》
について考えてきました。
小野善一郎先生は、
《自らの心に神様は存するのであるから、絶対に我欲我見によって心の神様を傷つけてはならない》
と教えられています。
私はこの学びを続ける中で、
一つの疑問を持つようになりました。
それは、
《なぜ古事記に書かれていることと、世界各地の古代文化に共通点があるのだろうか》
ということです。
日本だけではありません。
北米先住民。
シベリアのシャーマン。
オーストラリア先住民。
古代ギリシア。
世界各地の神話や伝承には、
《人間は自然から切り離されていない》
という共通した生命観が見られます。
今回は、
小野先生が語られた
《ある世界》
を手がかりに、
人類共通の生命観について考えてみたいと思います。
《本稿は|This Article Covers》
《1 ある世界とは何か》
《What Is the World That Is?》
《2 天地一貫のいのち》
《Life United Through Heaven and Earth》
《3 神話は何を語っているのか》
《What Do Myths Tell Us?》
《4 シャーマニズムとアニミズム》
《Shamanism and Animism》
《5 ユングと集合的無意識》
《Jung and the Collective Unconscious》
《6 小野先生の教えとの接点》
《The Connection to Rev. Ono’s Teachings》
《本文|Main Body》
《1 ある世界とは何か》
《What Is the World That Is?》
小野先生は勉強会の中で、
《ある世界》
という表現を使われることがありました。
これは学術用語ではありません。
しかし私は、
《天地に元から存在する世界》
を意味しているのではないかと思います。
太陽。
月。
海。
山。
森。
風。
生命。
これらは人間が作ったものではありません。
私たちが生まれる前から存在していました。
そして私たちが去った後も存在し続けます。
このような世界を、
私は《ある世界》と理解しています。
《2 天地一貫のいのち》
《Life United Through Heaven and Earth》
小野先生は、
《天地一貫のいのち》
という言葉をたびたび語られていました。
これは古事記そのものの用語ではありません。
しかし古事記全体に流れる生命観を表現した言葉として理解することができます。
天地は分離していない。
神々と自然は分離していない。
自然と人間は分離していない。
すべては一つの生命の流れの中にある。
この生命観は、
現代人にとっては新しく見えるかもしれません。
しかし古代人にとっては、
むしろ当たり前の世界観だったように思われます。
《3 神話は何を語っているのか》
《What Do Myths Tell Us?》
現代では、
神話は昔話として扱われることが少なくありません。
しかし宗教学者ミルチャ・エリアーデは、
神話とは
《世界の本来の姿を語る物語》
であると述べています。
古事記も同じです。
天地開闢。
神々の誕生。
国生み。
天孫降臨。
これらは歴史を説明するためだけの話ではありません。
《人間とは何か》
《世界とは何か》
《生命とは何か》
を語ろうとしているのです。
《4 シャーマニズムとアニミズム》
《Shamanism and Animism》
文化人類学者たちは、
世界各地の伝統文化に共通する特徴を発見しました。
それは、
自然が単なる物ではないという考え方です。
山にも生命がある。
川にも生命がある。
森にも生命がある。
動物にも魂がある。
祖先も生き続けている。
この世界観を
《アニミズム》
と呼びます。
また、
シャーマンは、
人間と自然、
人間と霊的世界をつなぐ役割を担っていました。
私はこれらの世界観が、
古事記の生命観とも響き合うように感じています。
《5 ユングと集合的無意識》
《Jung and the Collective Unconscious》
スイスの心理学者ユングは、
《集合的無意識》
という考え方を提唱しました。
人類の深い無意識には、
民族や時代を超えた共通の心の型が存在する。
という考え方です。
世界中の神話に、
世界樹、
英雄、
再生、
天と地、
光と闇
が現れるのは、
人類共通の深層心理があるからだと考えました。
もしそうであるなら、
古事記もまた、
日本人だけの物語ではなく、
人類共通の深い生命観を語る神話として読むことができるのかもしれません。
《6 小野先生の教えとの接点》
《The Connection to Rev. Ono’s Teachings》
私は今回の対話を通じて、
小野先生の教えは、
特定の思想を他者に押し付けるものではないように感じています。
むしろ、
世界各地の伝統文化や神話が語ってきた
《生命はつながっている》
という感覚を、
日本の言葉で語り直しているように見えます。
《天地一貫のいのち》
という言葉は、
その代表的な表現なのではないでしょうか。
《まとめ|Summary》
《ある世界》とは、
天地に元から存在する世界です。
そしてその世界は、
人間だけではなく、
自然、
生命、
神々、
祖先を含む大きなつながりの中にあります。
古事記。
神話。
シャーマニズム。
アニミズム。
ユング。
表現は違います。
しかしその奥には、
《生命はつながっている》
という共通した感覚が流れているように思います。
私は小野先生の語られた
《天地一貫のいのち》
もまた、
その流れの中にある言葉として理解しています。
《参考文献|References》
《1 The Archetypes and the Collective Unconscious》
《元型と集合的無意識》
Carl Gustav Jung
■ 内容
ユングが提唱した《集合的無意識》と《元型》について論じた代表作。
人類の深層心理には民族や時代を超えて共通する心の型が存在し、それが神話・宗教・夢・象徴として現れると考察している。
■ 歴史的位置づけ
20世紀分析心理学の中心文献。
神話学、宗教学、文化人類学にも大きな影響を与えた。
■ 本稿との接続点
《なぜ世界中に似た神話が存在するのか》
《なぜ天と地を結ぶ生命観が繰り返し現れるのか》
を理解する手がかりとなる。
《2 Myth and Reality》
《神話と現実》
Mircea Eliade
■ 内容
神話とは単なる昔話ではなく、
《世界の本来の姿》
を語る聖なる物語であると論じる。
■ 歴史的位置づけ
20世紀宗教学における神話研究の代表的著作。
■ 本稿との接続点
《古事記》を歴史書としてではなく、
《生命観を語る神話》
として読む視点を与える。
《3 Shamanism: Archaic Techniques of Ecstasy》
《シャーマニズム ― 古代的脱魂技法》
Mircea Eliade
■ 内容
世界各地のシャーマニズムを比較研究した代表的著作。
エリアーデはシャーマニズムを、
《脱魂(Ecstasy)》
すなわち通常意識を超え、
魂が天界・地上・祖先の世界を往来する技術として定義した。
シャーマンは、
病気の治療、
予言、
死者の魂の誘導、
共同体と神聖世界との仲介を担う。
■ 歴史的位置づけ
20世紀宗教学・文化人類学におけるシャーマニズム研究の古典。
現在も世界各地の先住民研究の基礎文献となっている。
■ 本稿との接続点
《天と地を結ぶ存在》
という視点は、
小野善一郎先生の語られた
《天地一貫のいのち》
を理解する重要な手がかりとなる。
《4 The Spell of the Sensuous》
《感覚の呪縛》
David Abram
■ 内容
近代以前の人類が持っていた
《自然との対話的関係》
を現象学と文化人類学から論じた著作。
■ 歴史的位置づけ
現代アニミズム研究と環境思想の代表作。
■ 本稿との接続点
《天地一貫のいのち》
《自然とのつながり》
を現代的に理解する助けとなる。
《5 凌霜のこころ》
小野善一郎
■ 内容
古事記、大祓詞、異心、心神、天照大御神の御心についてまとめた冊子。
■ 歴史的位置づけ
古事記勉強会の副読本。
■ 本稿との接続点
《天地一貫のいのち》
《ある世界》
を理解する中心資料。
《6 日本を元気にする古事記のこころ》
小野善一郎
■ 内容
古事記を現代の生き方として読み解いた著作。
■ 歴史的位置づけ
現代神道思想・古事記学習の実践書。
■ 本稿との接続点
《古事記のこころに私たちのこころを照らす》
というシリーズ全体の基礎文献。
《7 古事記》
Kojiki
■ 内容
日本最古の神話・歴史書。
天地開闢から天孫降臨までを記す。
■ 歴史的位置づけ
日本精神文化の原点。
■ 本稿との接続点
《天地一貫のいのち》
《しらす》
《天照大御神の御心》
を考える基礎となる。
《用語解説|Glossary》
《1 天地一貫のいのち》
Life United Through Heaven and Earth
《仕組み中心の解説》
天地・自然・神々・人間・祖先は分離した存在ではなく、
一つの生命の流れの中にあるという生命観。
《回路レベル》
天地
↓
自然
↓
生命
↓
人間
↓
祖先
↓
次世代
《機能レベル》
生命の相互依存性を理解し、
自然との調和を促す。
《2 神話|Myth》
《仕組み中心の解説》
神話とは空想物語ではなく、
《世界は本来どうなっているのか》
を語るための物語。
《回路レベル》
神話
↓
世界観
↓
価値観
↓
生き方
《機能レベル》
共同体に生きる意味と方向性を与える。
《3 アニミズム|Animism》
《仕組み中心の解説》
自然界のあらゆる存在に生命や霊性を認める世界観。
《回路レベル》
山
↓
川
↓
森
↓
動物
↓
祖先
↓
人間
《機能レベル》
自然との共生意識を育てる。
《4 シャーマニズム|Shamanism》
《仕組み中心の解説》
世界各地に見られる古代的霊性文化。
宗教学者ミルチャ・エリアーデは、
シャーマニズムを
《脱魂(Ecstasy)》
の技術と定義した。
ここでいう脱魂とは、
性的興奮ではなく、
《通常の自己意識を超えて天界・地上・祖先の世界を往来する霊的体験》
を意味する。
シャーマンは、
天と地、
人間と自然、
生者と祖先、
共同体と神聖世界を結ぶ仲介者として働いた。
《回路レベル》
天界
↓
シャーマン
↓
共同体
↓
自然
↓
祖先
↓
生命循環
《機能レベル》
分離したものを再び結び、
共同体と自然界の調和を回復する。
《本稿との接続点》
《天地を結ぶ》
という働きは、
《天地一貫のいのち》
の理解を深める。
《5 集合的無意識|Collective Unconscious》
《仕組み中心の解説》
ユングが提唱した、人類共通の深層心理構造。
《回路レベル》
元型
↓
神話
↓
宗教
↓
文化
↓
個人意識
《機能レベル》
民族や時代を超えた共通性を生み出す。
《6 ある世界》
The World That Is
《仕組み中心の解説》
人間が作る以前から存在する世界。
天地・自然・生命そのもの。
《回路レベル》
天地
↓
自然
↓
生命
↓
人間
《機能レベル》
人間が本来帰るべき基盤を示す。
《次回予告|Next Issue》
《第2回 後半》
《作られた世界とは何か》
《What Is the World That Is Made?》
今回見てきたように、
世界各地の神話や伝統文化には、
《天と地》
《人と自然》
《祖先と子孫》
を結ぶ生命観が見られます。
小野善一郎先生が語られた
《天地一貫のいのち》
も、
その流れの中にあるように思われます。
しかし人間は、
もう一つの世界を作り出します。
それが
《作られた世界》
です。
次回は、
《我欲我見》
《異心》
という視点から、
なぜ人は天地の理から離れてしまうのか、
そして《作られた世界》がどのように生まれるのかを考えてみたいと思います。
その先に、
古事記に語られる
《しらす》
《うしはく》
という統治観が見えてきます。
また、
小野善一郎先生の言葉
《もし、天地一貫のいのちから離れた「うしはく」の異心の統治ならば、その異心は元々天地にない仮の姿であるから滅ぶるのは当然なのであります。》
の意味についても、
少しずつ学びを進めていきたいと思います。いつもありがとうございます


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